男の靴雑誌LAST

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issue08

Rend

「連動」と冠された、浅草発、繋がる靴づくり。

昨年誕生した、ドレスシューズブランド&ショップの『RENDO(レンド)』。
「連動」という単語からとったというその名が示す通り、その靴はさまざまなものとの連関から生み出されている。

太田隆生│写真 photographs_Takao Ohta
菅原幸裕│文 text_Yukihiro Sugawara

浅草RENDOの店内。小規模ながらも既製靴メーカーとして在庫を持つ。
「つくり手とお客様が直に話せる、新しいタイプの店です」と吉見氏。

浅草RENDOの店内。小規模ながらも既製靴メーカーとして在庫を持つ。
「つくり手とお客様が直に話せる、新しいタイプの店です」と吉見氏。

浅草RENDOの店内。小規模ながらも既製靴メーカーとして在庫を持つ。
「つくり手とお客様が直に話せる、新しいタイプの店です」と吉見氏。

浅草RENDOの店内。小規模ながらも既製靴メーカーとして在庫を持つ。
「つくり手とお客様が直に話せる、新しいタイプの店です」と吉見氏。

RENDOの初号ラスト。現代日本人の傾向を加味して、脚の入り方が外側からになるよう配慮し、足後方の内側は肉を盛っている。つくってみて、生産時の問題、そしてフィッティングの実感から、この後改良を加え続けている。

RENDOの初号ラスト。現代日本人の傾向を加味して、脚の入り方が外側からになるよう配慮し、足後方の内側は肉を盛っている。つくってみて、生産時の問題、そしてフィッティングの実感から、この後改良を加え続けている。

昨年誕生した、ドレスシューズブランド&ショップの『RENDO(レンド)』。「連動」という単語からとったというその名が示す通り、その靴はさまざまなものとの連関から生み出されている。靴づくりの中心となっているのは吉見鉄平氏。彼は独立系パタンナーそして企画としてさまざまな靴づくりに関わり、レンドでは木型、デザイン、パターンづくりを行っている。靴の生産を手がけているのは浅草のセントラル靴。かつて吉見氏が勤務していたシューズメーカーである。現状のレンドの靴は吉見氏とセントラル靴のコラボレーションといえる。
もっとも、吉見氏の場合、「連動」は「協業」ということだけではないだろう。むしろ「繋がり」という平たい言いまわしのほうが適切かもしれない。彼の今日までの歩みを紐解くと、その感をより強くする。
大学を3年時で休学し、向かった先は英国。そこで吉見氏は靴学校コードウェイナーズ・カレッジに入学する。もっともこの時点で彼は靴づくり志望ではなかった。
「靴が好きだったので、輸入などの仕事に就ければと、漠然と考えていました」(吉見氏)
ところが学校に行ってみると、そこには靴づくりを目指す日本人が多数いた。長谷川良治氏、田嶋塁氏、早藤良太氏。いずれも現在日本または世界で活躍するシューズデザイナーや靴職人だ。自分との考え方の違いに驚きつつも、学校で学ぶうち、パターンメイクが自分の性に合っていることを感じたという。帰国後は当初の通り貿易やエージェントの仕事をしようと就職活動したものの挫折。そんな時、長谷川良治氏から「一年間靴づくりが学べる職業訓練校がある」と聞き、台東分校(都立城東職業能力開発センター台東分校製くつ科)へと進んだ。「それが靴への道のスタートでした」と吉見氏は語る。

Teppei Yoshimi。RENDO創業者、スタジオヨシミ代表。英国コードウェイナーズ、城東職業能力開発センター(台東分校)を出た後、セントラル靴にて5年間勤務。独立して、2014年RENDOをスタート。

Teppei Yoshimi。RENDO創業者、スタジオヨシミ代表。英国コードウェイナーズ、城東職業能力開発センター(台東分校)を出た後、セントラル靴にて5年間勤務。独立して、2014年RENDOをスタート。

浅草にある、RENDOのショップ兼アトリエのファサード。街に開かれた感がある空間。

浅草にある、RENDOのショップ兼アトリエのファサード。街に開かれた感がある空間。

その後は浅草のシューズメーカー、セントラル靴へ入社。5年同社で働き、靴づくりのさまざまなことを修得した後、独立。「浅草商工会」という場所に事務所を構えた。この場所は地元の革加工会社社長が主催し、小規模なシューズビジネス関係者にスペースを提供していて、吉見氏は初期の入居者だった。同じフロアには豊橋「SEWN」の鈴木隆太氏、JOLIの佐々木一茂氏、そしてJUCO.のジュコ氏がいた。「彼らとはお互いに靴づくりをシェアするようになっていって、それはかつてのマンションメーカーのような感じでした」と吉見氏は語る。彼らをバックアップしていた件の社長は、裁断など、さまざまに分化して存在する浅草の業者を紹介してくれたという。
実はこの独立の前に、吉見氏はヨーロッパそして英国を旅している。パタンナーとして、自らの腕を海外で試す事はできないかと思ったのだ。だが実際は難しく、帰国し日本でスタートを切ったのだった。

RENDOでは顧客の足をフィッティングした後、不具合がある部分を革のパーツなどを木型に「乗せ甲」して靴をつくることも受け付けている。小規模であり、工場も近いゆえにできるやり方だ。

RENDOでは顧客の足をフィッティングした後、不具合がある部分を革のパーツなどを木型に「乗せ甲」して靴をつくることも受け付けている。小規模であり、工場も近いゆえにできるやり方だ。

手前は現在モディファイ中の木型。「よりシンプルになっていきます」と吉見氏。

手前は現在モディファイ中の木型。「よりシンプルになっていきます」と吉見氏。

最新モデルのチャッカブーツ。

最新モデルのチャッカブーツ。

写真でわかる通り、コバの出方を抑えることで、違った印象を生んでいる。

写真でわかる通り、コバの出方を抑えることで、違った印象を生んでいる。

製作中の新型ラストと、その木型を使ったカジュアルなUチップモデルの試作。新たなメーカーとの取り組みという。

製作中の新型ラストと、その木型を使ったカジュアルなUチップモデルの試作。新たなメーカーとの取り組みという。

パタンナーとしてだけでなく、企画などの仕事も請ける中で、あるショップからオリジナルの靴の開発を依頼される。それは木型づくりから取り組むものだった。靴業界には、木型は木型メーカーがつくるものという認識があり、メーカーであるセントラル靴にいた吉見氏には木型をつくった経験はなかった。だがその時は時間的に余裕があったこともあり、ゼロから木型を削ってみることにした。というのも、独立前に旅したヨーロッパで見たさまざまな木型が、それまで自分が使っていたものとあまりに違っていたことを感じていたからだった。
資料などをあたりながら、自分で独自に削った木型でつくられた靴は、高い評価を得る。だがそのことで吉見氏は「怖くなった」と言う。
「自分みたいな、木型のわけもわかっていない人間が削ったものでいいものかと、思ったのです」
そんなある日、部材店の店頭で、ビスポークシューメイカー・柳町弘之氏が主宰するラストメイクの講習案内を目にする。オーダーメイドと既製靴の木型はそもそも違うと柳町氏には言われたものの、吉見氏はその教えを乞うことにした。
「当時は、木型メーカーがつくる木型でいいのかという疑問があったのです。木型づくりをおぼえると、こんどはそれを試したくなりました」
パターンのチェックをするのに、そのパターンをベースに紙を裁断し、木型に実際つり込むのと同様に貼り込んで、切り返しやシューレースの位置などを確認している。さらに1皺などが出て無理がかかっているところを切って、その後この紙のテストを拡げて、パターンの修整に反映する。吉見氏が行っている靴づくり、パターンづくりのメソッドである。


柳町氏のところに集う人の多くは、オーダーメイドで、自身で靴づくりを行う人たち。既製靴のパタンナーである自分はどうすればいいのか。そうして行き着いたのが、自身のブランドを立ち上げることだった。
まさにさまざまな要素がその都度連関し、次のアクションが生み出されてきた吉見氏の歩み。その結果としてレンドが存在する。そしてスタートから1年、その靴づくりはどう「動いて」いるのか。
「当初の靴づくりは、協力してくれるセントラル靴という工場の存在があって、試しながら出来ました。それまで感じたことを反映した木型やパターンで、どこまで許されるか探りながら。そして店を構えて靴を売って、お客様も含めてさまざまな反応が返ってきました。今は、当初つくったものに、どんどん〝×〟がついていく感じです」(吉見氏)

セントラル靴の中澤(中澤専務)と談笑する吉見氏。いまなおお互い相談し合う仲という。

セントラル靴の中澤(中澤専務)と談笑する吉見氏。いまなおお互い相談し合う仲という。

「現場に常に顔を出すのが大事」という吉見氏。コミュニケーションが保てているからこそ、できる靴づくりもあるという。

「現場に常に顔を出すのが大事」という吉見氏。コミュニケーションが保てているからこそ、できる靴づくりもあるという。

生産工程にあったRENDOのアッパー。従来の既製靴よりもつくり込んだパターンゆえに、それを理解した作業が求められる。

生産工程にあったRENDOのアッパー。従来の既製靴よりもつくり込んだパターンゆえに、それを理解した作業が求められる。

セントラル靴の職人、真家氏の作業の様子。キャリア50年の熟練職人のもとを、吉見氏はよく訪れるという。

セントラル靴の職人、真家氏の作業の様子。キャリア50年の熟練職人のもとを、吉見氏はよく訪れるという。

生産現場の職人の声を反映しながら、最初のものから改良を加えたラストは、次第に彼が疑問に思った既製靴の木型に近づいている、そんな風にも感じている。だからといって旧来のラストに立ち返ることには抵抗がある。「どこを活かしどこを落としてバランスをとるかです」と吉見氏。さらに次のようにも語った。
「いまは木型もパターンも、ふわっとつくることが重要かなと思っています。靴づくりは共同作業なんです。80%ぐらいの感じでつくっておけば、あとは工場の現場がうまく収めてくれる。以前、師匠の職人が『鉄で靴をつくるんじゃねえんだから』と言っていたことが、今となってはよくわかります。靴づくりにおいては、ガチガチに決め込んだ設計ではダメなんだということが」
 既製靴とはいろんなところがぼやかされてつくられることで、より多くの人が受け入れられるものになっていく、そうも語る吉見氏。10年パターンをやり、ノウハウ、そして問題意識をつぎ込んだものをつくったゆえに、たどり着いた境地。動き出した連動の靴づくりは、履く人の声など、さらに多くの人たちと繋がりながら、次なる局面を迎えているようだ。
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LASTとは?

すべての紳士たちに向けた靴の専門誌です。こだわりを持つ男にとって、装いの要ともいえる靴を取り上げ、国内外の取材を織り交ぜながら、靴そのものの魅力と、靴を軸としたメンズスタイルの奥深い世界を紹介します。世界唯一の靴専門誌として、クオリティの高いヴィジュアルと、深い知識を備えた文章で、成熟した知性にとっても満足をもたらす誌面を追求していきます。タイトルの『LAST(ラスト)』は 、靴をつくる際に必要である木型(靴型)に由来します。